60円45銭

創作のネタとかいろいろ

【駄文】001


 いやーいやー、大変お待たせしちまいまして申し訳ありませんねェ。

 どもどもお初にお目にかかります、私が曼荼羅華でございます。ええ。はいはい。マンダラカ。やや、チョウセンアサガオだなんてそんな、違いますよゥ。私めの名前の由来は天華てんげの類ですから。

 それで、えっと。お客さん方は態々私めに何の御用で……。…………ええっ、泉の屋敷の話を? 聞き集めてらっしゃるので!? ……はーーー、物好きな御方もいらっしゃるのですなァ。

 いえ、別に話したくないとかそういうことじゃあなくてですよ。

 ……はい、まあ。承知しましたよゥ。

 えっとですね、私が件のお屋敷に奉公していたのは、今からもう……二、三百年は昔になりますでしょうか。……ええ。そうですよ。まだ徳川の幕府が健在だった頃になります。

 その当時私は、泉姫様と云う、そりゃあそりゃあ美しいお姫様のお付きをしておりました。ええ。そうです。泉姫様のお屋敷なんで「泉の屋敷」。まあ、姫と云いましても群生する竹の子です故、お屋敷の中には姫様ばかり十……六、七……とにかくそのくらいおりました。泉姫様はその中で一番偉い姫様でした。ええ。

 他の姫様ですか? 確か春日様、空蝉様、烏羽玉様に――すみません、何分私めは人の名前を覚えるのが苦手でして、特に泉様と親しかった方以外はあまり覚えておりませんのです。いやあ申し訳ない。いえいえ。本当にお恥ずかしい限りです。

 ああ、そうだ。一人変わったお方がおられたのは覚えております。ええ、ええ。兎に角変わっておられるのです。名は確かカエン様と申しました。泉姫様の数少ない弟君の一人で、竹の子の癖に人里に下りて遠くへ行くのが好きな……まあ、物好きな御方でございました。

 そんな理由で普段はお屋敷におりませんでしたが、何月か一度に必ず戻ってきては人里で見つけた珍しい物や見聞きした出来事、芝居の話なんかをするもんで、他の姫様方には大変人気でございましたよ。

 え、私ですか? ……いやあ、私はああいった輩はちょっと……。

 や、だって瞳も御髪も鬼のように真っ赤っ赤なんですよゥ? 猩々でもあるまいし……。

 ああはい、話を戻しますね。

 まあそんな変わり者も居りましたが、泉姫様の屋敷は概ね平和でございました。
 仕える身としても毎日楽しかったですよ、ええ。


 あの日がくるまでは……ですがね。

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2014. 8.15   15.3

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駄文欠番【約束】

 それを手に入れる為にここまで来たのだと、私の前に現れたあなたははっきりとそう言った。

 私とあなたの持つそれは、元々一つだったのだと。二つに別れて歪になった欠片なのだと。あなたは確かにそう言った。

 二つを一つにするために来たはずのあなた。だけどあなたが私から奪うことは終ぞなかったわ。

 ねえ、私のことはもういいの。……私のことはどうでもいいのです。

 だから全てが起こってしまうより先に、私の持つ一欠片をどうか持ち帰ってください。

 本来あなたに全て与えられるはずだったのです。私には過ぎたる力なのです。

 だから、どうか。さあ、はやく。





 それを回収する為に俺は来た。
 しかし運命の片割れは既に別人の中に根付いていて。

 引き離すことは容易いことだが、彼女の中からその一欠片を奪ってしまえば、彼女は忽ち塵と化すだろう。

 だのに俺に目的の達成を急かす彼女は、何か俺の預かり知らない事を知っているようだった。

 君は何を知っているのか。

 君は何を見たいうのか。

 どうでもいいなんて、そんなわけがあるか。そんなことを言う君は、いつだって泣いてるじゃあないか。




 終わる終わる世界の中で、私たちは約束したのです。

 今度こそ私を殺してね。


 また繰り返す世界の中で、俺達は噛み合わない約束をした。

 次こそ君を助けるから。


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2014. 7.19 2983541回目

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「手」

 おじい様の手が好き。
 私の手と違って固くてごわごわしているけれど、優しく頭をなでてくれるその手が好き。
 そう言うと、おじい様は目を細めて「ありがとうねえ」って笑って、私より長い【おひげ】を揺らすのよ。ね?
 そして沢山の手でもっともっと私のことを撫でてくれるの。

 おじい様、私はおじい様の事が大好きよ。おじい様の沢山の手が大好きよ。

 顔も形も似てないけれど、おじい様が大好きよ。

 だからね、おじい様。どうかどうか、ずっといつまでも長生きしてね? また面白い話を聞かせてね? 明日もまた来るから、ね?

 おじい様。……どうかどうか。早くよくなってちょうだい。
 どうか、どうか。いい子にするから、どうか。


 握りしめたのはつめたい手。もともと暖かくはなかったたけれど、今日はまるで氷のよう。

 おじい様は何も言わない。
 起きあがることもない。
 もう私を撫でてくれない。
 もう私に微笑んでくれない。
 もう誰とも喋らない。

 おじい様はいってしまった。

 大百足の足を握りしめ、幼い私は嗚咽を漏らす。

 おじい様はもういない。

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2014. 7.11 ディウスラジウムとおじい様の話

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「翼」

*若干アレのあの辺のネタバレ注意*

 これからお話しすることを、どうか笑わないで聞いて頂けますか。
 もう何年から昔の話でしょうか。おそらく、わたくしがあなたと最後に会ってから後のことなので、百年近くは昔のことになると思います。


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白翼の鳥、虚の卵 下


 ぴとん、ぴとん、ざぁざぁざぁ。
 地面に乱暴に当たり散らすような水の音。土砂降りの雨が降っていた。

 ぴとん、ぴとん、ぺちゃぺちゃぺちゃ。
 私は靴も靴下も履かない素足で、濡れてぬかるんだ斜面を歩いている。

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