左から南中学区古霊小学校の花子さん、
歪小学校の花子さん。
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古霊小の花子さんは二小の花子さんと同時期の成立。
かつては千人近い児童数を誇り、少子化で三分の一程度まで減ってしまった現在でも、古霊町一の児童数を有する古霊小学校で語り継がれてきた怪異であることを誇りに思っている。
怪異としては職人気質であり、一度喚ばれた以上は求めに応じるのが花子さんとしての自分の務めだと信じている。
召喚方法は「
三階中央女子トイレの
一番手前のドアを
三回ノックして「花子さん」と
三回唱える」。
呼ぶと「はーい」という声がどこからか聞こえるので、そこから、
・逃げると何も起こらない。
・「出てきてください」と言うと個室上の隙間から白くて長い手が伸びてくる。
・「花子さんなんか怖くないぞ」、あるいはそれに類する言葉でけんかを売ると水をかけられる。
等の話に分岐する。
また、十年に一度程しか囁かれない奇妙な派生もある。
・三階中央女子トイレの一番手前のドアを三回ノックして「
花子さん、明日の靴は何色ですか?」と訊ねると、
赤、
青、
白のいずれかが返ってくる。
1)
赤と返ってきたら明日血の出る怪我をする
2)
青と返ってきたら明日どこかに青痣ができる
3)
白と返ってきたら明日死ぬ
何年もの断絶を経て時たま一瞬だけ蘇るこの噂話を、花子さん自身は人間が広めている噂ではないかもしれないと思っている。
少なくとも広めているのは花子さんではないらしい。答えているのも……?
赤紙青紙系統の怪異にどこか似るが、関連は不明。
また、古霊小の花子さんに関しては以下のような噂もある。
・下校時に花子さんの出るトイレに1人で入り、「花子さんさようなら」と言うと「またあした」と返してくれる。
・花子さんを呼び出せるトイレで、掃除の後に「きれいにしておきました」と言うと「ありがとう」と返ってくる。
・夕暮れ時に花壇の世話をしている見知らぬ児童は花子さん、とも。
返事をされた体験談や目撃情報の数は一小の花子さんに次いで多く、割とサービス精神旺盛なのかもしれない。
また、真夜中の体育館で花子さんが校歌を歌っているという噂がある。その歌を聞くとなぜかとても悲しくなって泣きたくなってしまうらしい。
それを聞いていた時の先生方が残業で泣きたいだけだったのかもしれないが……
親友は「たまに動く正門前の児童像」や「夜に勝手に演奏を始める体育館のピアノ」。
「音楽室の連中」ともそこそこ仲がいいらしい。
***
歪小の花子さんの成立は戦後まもなく。
「学校の便所で返事する何か」として誕生し、花子さんの概念が伝わるにつれてそう呼ばれるようになった。
髪型は花子さんに珍しく二つ結びであり、古霊町の花子さんの中では一番穏やか。
基本的には呼ばれても返事を返すだけの無害タイプ。姿を見せることは稀だが、二小の花子さんと違って返事はほぼ確実にしてくれる。
怖い目にあわせるより、どちらかというと鏡の怪異や赤紙青紙のストッパーであり、他の学校の怪談に巻き込まれた子供を助け出して人と怪異のパワーバランスを保つ存在。
しかしそんな花子さんですら激怒してしまう地雷的行動があるらしく、その時はとんでもなく恐ろしいことが起こる、とか(一説には「血の雨が降る」だとか「学校がなくなる」とも言われているが、真相は不明)。
召喚方法は「
三階女子トイレの
奥から四番目のドアを
三回ノックして「花子さん」と呼ぶ」のを
三度繰り返すという、少々変則的な方法を取る。
その他伝わっている花子さんとされる目撃談・噂としては、
・トイレの鏡に赤いスカートの女の子が映りこんだが、振り返ったら誰もいなかった。
・下校時刻間際にすすり泣く声を聞いた児童が、「誰が泣いているの?」と聞いたら「花子さん」と答えた(泣いている理由として「子どもたちがいなくなるのがさみしいから」と続くことがある)。
・ある年、トイレでいじめられっ子がいじめっ子グループに水を被せられそうになっていたとき、どこからか「だめだよ」という声がはっきり聞こえた。
・ある先生が帰り際にふと三階を見上げたら、見覚えの無い女の子が窓から身を乗り出して手を振っていた。
・その年定年を迎える先生が三階トイレに入った時、どこからか赤いスカートで二つ結びの女の子が寄って来て「いままでお疲れ様でした」と言って消えた。
等々がある。
実際に「でた!」と騒がれることは少なめであるものの、こちらも古霊小の花子さんと同様にちょくちょく存在をアピールしている。二小の花子さんも見習おう。
稀に児童の前に姿を現すときは、常時ではないが白い鞄を下げていることがあるという。
その時は「飴やチョコレート等のお菓子を貰える」、もしくは「鞄の中には得体の知れない何かが入っている」などと言われている。
子供を守ったりしているのは昔の校長先生との間にある約束をしたかららしい。
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