似てない双子と周囲は言った。
「お前と姉は似ていない」
妹がそうからかわれると、姉は怒って言い返した。
「かず子も何か言い返しな」
そう言う姉に妹は思った。
面が良いからそう言えるのだ。
はやしたてる周囲も取り立てて顔がいいわけじゃないではないか。
揃いも揃って芋や大根の親戚のような顔をしながらよくもまあひとのことをいえたものだ。
それもこれも比べる対象が常に近くにいるのがいけないのだ。
あの面、あの顔すら側からなくなってくれれば。
その日、蔵の近くに大人はいなかった。
――昭和十年、某日[1回]