「砂上の楼閣」

あおむし赤果 · 砂上の楼閣

眠る前に吐き出した言葉が
逃げきる前にそっと包んで
縋るために伸ばした腕の
指は虚しく空を薙いで
「目を醒まさないで」
「幻想ゆめに溺れ死んで」
すべての景色が塗り替えられる前に
私の中から　零れ落ちた血は
色もなくて　マヤカシだけ
飲み込んで　飲み込んで
満たされない　飢えに喘いで
内側から崩れ落ちてしまう
歩き出して　歩き出して
遠ざかった　背中を追い続けて
奇麗に砕けろ


崩れ落ちたその後には
消えやしない瘡蓋かさぶただけ
深く残る跡になって
いつかどこかでまた皹ヒビ割れる
「置いていかないで、でも振り向かないで」
なにも見えなくなってしまう前に
私の貌カタチが　嘘を映し出す
黒い影の　アヤカシだけ　（瞳は閉じて、全ては終わる。／Inside of my heart, leave an eternal scar.）
愛さないで　愛さないで
渇き切った　願いの重さに
外殻がいかくさえ砕け散ってしまう
逃げ出して　逃げ出して
もう二度と　追い付けないように
どこか遠くへと


掌てのひらを捧げ　掬う雫を
奥底まで残さず飲み干して
傷だらけの　体が崩れてく
空洞ぬけがら捨て　私は目醒める

飲み込んで　飲み込んで
満たされない　飢えに喘いで
内側から崩れ落ちた　後で
愛さないで　愛さないで
渇き切った　願いを救って

奇麗に砕けろ

「綺麗に」砕けろ