60円45銭

創作のネタとかいろいろ

「手」

 おじい様の手が好き。
 私の手と違って固くてごわごわしているけれど、優しく頭をなでてくれるその手が好き。
 そう言うと、おじい様は目を細めて「ありがとうねえ」って笑って、私より長い【おひげ】を揺らすのよ。ね?
 そして沢山の手でもっともっと私のことを撫でてくれるの。

 おじい様、私はおじい様の事が大好きよ。おじい様の沢山の手が大好きよ。

 顔も形も似てないけれど、おじい様が大好きよ。

 だからね、おじい様。どうかどうか、ずっといつまでも長生きしてね? また面白い話を聞かせてね? 明日もまた来るから、ね?

 おじい様。……どうかどうか。早くよくなってちょうだい。
 どうか、どうか。いい子にするから、どうか。


 握りしめたのはつめたい手。もともと暖かくはなかったたけれど、今日はまるで氷のよう。

 おじい様は何も言わない。
 起きあがることもない。
 もう私を撫でてくれない。
 もう私に微笑んでくれない。
 もう誰とも喋らない。

 おじい様はいってしまった。

 大百足の足を握りしめ、幼い私は嗚咽を漏らす。

 おじい様はもういない。

*******
2014. 7.11 ディウスラジウムとおじい様の話

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