「胡蝶の夢」

あおむし赤果 · 胡蝶の夢

海の底に　溺れてく夢を見た
不快、青　苦しくて
息ができず
目を覚ます　代わり映えのない
灰色の日常がある
本当は私は何も見たくなんかないんだ
目を覚まさないで
起こさないで
もう何も見たくない
肥やされた蛹はもう死んでいるけど
それでいいんだ
起こさないで
もう二度と夢なんて見せないで
目を閉ざす瞼の裏
火が映る
赤い　火が


本当は他人の事なんてどうでもいいんだ
周りに合わせて
知った振りをしてるだけだ
青い空なんて嫌い
見透かすような色で
どうせそこで見てるんだ
あの日と同じ表情カオで
目を覚まさないで
起こさないで
もう何も聞こえない
傷ついた芋虫はたぶん死んでしまうけど
それでいいんだ
起こさないで
もう何も信じたくなんかない
目を閉じるその先で
火が燃える
飲まれるように

「お願い」

目を覚まさないで
　(夢を壊さないで)
起こさないで
　(殺さないで)
でも扉は開いて
　(やっと扉は開いて)
蝶になれてもそこに何もないけど
もういいんだ
起こさないで
もう二度と希望を見せつけないで
目を瞑るその奥で
火が消える

消えてゆく

（つよく　つよく　羽ばたく夢を見たの）
（もっと　もっと　信じていたいの）
（ずっと　ずっと　それを願っていたの）
（どうか　どうか　わたしを　ころして　と）

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3.5期「怪事鏡話」予定